かっぱらい時代以前の仔黒を全速力妄想。
一番古い記憶は男と女。そしてゴミタメみたいな部屋。
男は俺を殴った。
女は無関心を装った。
男は俺をコイツと呼んだ。
女は俺をキョーシローと呼んだ。
だから俺は自分は「コイツ」か「キョーシロー」なのだと分かった。
そのうち俺にも知識がつくと、自分の名前が「キョーシロー」の方だと分かるようになった。
いつの間にか部屋や男が変わっていることがあった。周りに散らばる文字が変わったこともある
それが何度かあったが、他は何も変わらなかった。
ただ、あまり散髪をしなかったため髪の毛は背中に届くほど伸びたが。
ある日男と女と俺は知らない町にいた。なんだか住んでいる部屋を思いっきり大きくしたような町だった。
女は俺にビニール袋と紙切れをを渡すと「ちょっと待っててね」
と言って男とどこかへ行った。
…それ以来二人に会ったことはない。
女からもらったビニール袋も、中身を確かめる前に俺より少し大きいかっぱらいに掠めとられた。
結局残されたのは紙切れひとつだった。
紙切れにはこう書いてあった。「Kyosiro Kokujo 6」
俺が「子供の家」に拾われたのはそれからたった三日後だった。
二人の最初で最後の優しさがビニール袋の中身と紙切れ、そして俺を施設の近くに置いて行ったことだった。
もっともビニール袋は掠めとられたが。
俺を見つけた「園長先生」はデップリ太っていて、シャツが汗で透き通っているような男だった。
「園長先生」とは空腹に耐えかねてゴミ箱を漁って、食あたりで苦しんでいた時に出会った。
「坊や、何か古いものでも食べたんだろう。お父さんとお母さんはいないのかい?」ヤツは吐瀉物まみれの俺を見下ろして聞いた。俺は慌てて起きて袖で顔に着いた吐瀉物を拭って「すぐ戻って来るって言ってどっか行った」と答えた。
「君、三日前からここにいるじゃないか。きっとお父さんもお母さんも迷子になっているんだ。僕のところに来ないかい?お母さんたちが見つかるまでご飯を食べさせてあげるよ」
結局俺はそのまま「園長先生」に連れられて「子供の家」に入った。
施設と言っても「子供の家」は子供が10人ほどいる少し大きな民家と言ったような所だった。
そこにいる子供たちはロクでもないやつばかりだった。だいたいがいつもビクビクするか、隠れて人を殴るようなやつばかりだった。中にはなんと俺からビニール袋をかっぱらった奴までいた。
俺が「子供の家」に入ったとき、かっぱらいは俺に気づくと悪びれもせずにニヤニヤしながら向こうから来た。「言ったら承知しねーぞ。もっとも、言ったって、俺は『お気に入り』だからな。あんま意味ないだろーよ」
何を言っているんだコイツ、と俺は思った。そもそも俺は告げ口をしようと思っていない。そんなことをして誉められた覚えもないからだ。大体コイツの言うことの意味が分からない。「お気に入り」てなんなんだ?
………その「お気に入り」の意味を文字通り身をもって知ったのは間もなくのことだった。
続く。
ええ…と、私の妄想的推測では、名前からしてハーフにしろ、なににしろ、黒城くんの両親は少なくとも片方、または両方日本人、もしくは日本に関わりのある人だと思っています。そして自分の名前だけは音で覚えていて、それに後々「黒城凶死郎」と言う中二全開の当て字をした。(本当はもっとマトモな字だった)
黒城くんが幼少期にスペインにいたのは両親か片親が何らかの事情で黒城くんとスペインに来て、滞在中に何らかの事故や都合で親を失ってしまったと思っています
ちなみにこのSSでは黒城くんの母親=女は美人だけど結構なビッチで男をとっかえひっかえしているうちに、黒城くんを連れて男とスペインへ渡航。しばらくたって放任ながらも一応手放さなかった黒城くんを、新しい男に命令されて捨てたということにします。
そこから元々あまり恵まれていなかった黒城くんのドン底期間が訪れるという妄想SSです。
続きは後日。多分次からパスつきになると思います。